No.018

ミドリムシのユーグレナの社長講演を聞きました

NEDO主催「大学研究者の起業を支援するセミナー」で講演した株式会社ユーグレナの代表取締役社長・出雲氏のお話がとても印象に残りましたのでみなさんに報告します。

【セミナー概要】
日時:2014年4月16日(水)14:00~15:45
会場:TKP東京駅八重洲カンファレンスセンター7F ホール7C
主催:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)

以下が出雲社長の講演「起業家が語る成功体験」(14:05~14:35)の要点です。

・生まれ育ったのは多摩ニュータウン。親はサラリーマン。海外経験もなく育った。将来は父親のようにサラリーマンか公務員になろうと思っていた。ミドリムシで会社を起こすなど思いもよらなかった。

・東大農学部1年生(18歳)の時,初めて海外へ行った。それがバングラデシュ。グラミン銀行で有名なムハマド総裁のNGOで1ヶ月間アルバイトするのが目的。

・世界の人口推移を見ると,バングラデシュに行った1998年が60億人。現在(2014年)が70億人という調子で増加中。2009年に食糧不足になって10億人以上が飢餓になる,という話だった。だから,カロリーメイトを100個くらいお土産に持参しようと思っていた。しかし,実際にバングラデシュに行ってみると,飢えた子供は一人もいなかった。

・1日1ドルの収入,年収35,000円という貧困層が大勢いる。しかし食糧危機はなく,みんな1日500gのお米をカレーで食べていた。しかし問題は,カレーの中に具材がないこと。そのため炭水化物以外の栄養不足が起こっていた。そのため腹水が溜まった子供が大勢いた。

・バングラデシュの食料問題は栄養バランスだった。人の栄養源は植物(光合成して生きる生物)と動物(他の生物を捕食して生きる生物)の2つ。そこで大学に戻って両方の栄養素が採れる食べ物を探した。その答えがミドリムシだった。葉緑素を持って光合成できるという植物の要素を持ちつつ,自ら運動して動くことができるという動物の要素も併せ持つ。

・しかし,ミドリムシを食糧問題解決の切り札にするにはハードルが2つあった。
第一のハードルはネーミング。
ミドリムシのムシという言葉が人々に嫌がられる。研究者はミドリムシが59種類の動植物系の栄養素を持っていることはみんな知っているのだが。

・第二のハードルは大量培養ができないこと。
ミドリムシの栄養価が高いため,プランクトン,バクテリア,カビなどの餌になってします。片っ端から食べられて増えない。実験用にはクリーンな環境下で育てたものを使うが,この方法では量を賄えない。安価に,大量に生産する技術の確立が必要だった。

・ユーグレナのコア技術はミドリムシの安価・大量生産技術の確立にある。2005年12月26日,沖縄の直径45メートルの露天プールでミドリムシの収穫に成功した。安く,大量に作れるようになった。

・ユーグレナのビジョンは2つ。
一つは,ミドリムシで人々をヘルシーにするということ。
ミドリムシ10億匹=1g=錠剤5粒=には,梅干し10個分のベータカロチン,牛レバー50g分のビタミンB12,イワシ1匹分の葉酸,アサリ50g分の亜鉛などなどが入っている。10億人の栄養失調の人に肉や魚を届けるのは不可能。しかし,ミドリムシの錠剤なら届けられる。ここがポイントです。

・もう一つは,ミドリムシで地球をヘルシーにするということ。
CO2削減の救世主としてバイオ燃料がある。第一世代はトウモロコシ。しかしこの欠点は,生産されたトウモロコシは食料との取り合いになり,現状4億人分を車業界が購入してバイオエタノールになっている。その結果,南米の食料として購入していた人々は困ったことになった。第二世代はミドリムシだ。ミドリムシならば農地でない場所,荒れ地,耕作放棄地,プールを作れる場所ならどこでも収穫できる。2020年東京オリンピックに照準を併せ,ANA364便にはミドリムシのバイオジェット燃料を提供する。

・研究ステージと産業化ステージのギャップは大量培養だった。ユーグレナは私(出雲氏)とポスドクの鈴木,福本の3人でスタートした。資金力なし。2005年の12月にミドリムシを大量生産できるようになったので,2006年1月から営業を始めた。しかし売れない。どこも話は聞くけれど買ってくれない。結局,2007年12月までの2年間,500社を訪問したが,全て断られた。「前例は?」「他に採用した会社はありますか?」が断られるときの決まり文句だった。

・2008年5月,501社目にやっとミドリムシを買ってくれる会社が現れた。それが伊藤忠商事。それから一気に状況が変わった。飛ぶように売れるようになった。プールの増設には日立が参加。プールの土台には清水建設が参加。クロスライセンス,オープンイノベーションの考え方。ユーグレナはミドリムシの栽培技術に特化して後のプロセスは各社が参画することで実現した。

・2012年12月20日東証マザーズに株式公開。社員数38名,平均年齢31.0歳,商品はミドリムシのみ。850億円の評価を頂いた。こんな大学発ベンチャーがあとあと10社できたら大学発ベンチャーが1兆円産業になる。そのためにはユーグレナにとっての伊藤忠商事のような会社の存在が大事。

・ミドリムシが売れると,バングラデシュの学校給食にユーグレナの錠剤が提供される仕組みになっている。

・大学発ベンチャーから見て大事なことは,研究者が取り組んでいるテーマを見て大企業が一緒にやりたくなるものであるかどうか。また,そのテーマに関して研究者が最も先進的であること(業界トップの大企業とぶつかっても勝てる技術力があること)だ。大企業にお願いしたいことは,採用実績がないことをタテに断るのではなく,リクスはチャンスだと捉えて欲しい。 

以上。

株式会社ユーグレナ
http://www.euglena.jp/