UEC-IM(URA)インタビューシリーズ No.006

学生も大学発ベンチャーも大事なのは世界を視野に入れたでっかい志。「この分野で世界1」を目指して力をつけよう。

電気通信大学特任教授 志茂武(しも・たけし)

プロフィールはこちら>>

 

かながわサイエンスパークを中心にしたビジネスインキュベーション支援の経験,中小企業診断士として神奈川県の多数の中小企業の診断と指導の実績をもとに電通大インキュベーション施設の設立に貢献した志茂先生に,学生とベンチャー企業へのメッセージを聞いた。

【インタビューは2013年12月18日,電通大にて。写真と文/IM(URA) 安部博文)】

▲電通大西キャンパスのイノベーティブ研究棟前にて。この棟の4階と5階がインキュベーション施設である。

電通大インキュベーション施設は2011年4月に開設です。施設づくりに携わった志茂先生の思いをお聞かせください。

志茂  当時の学長と産学連携センター長には,学内にビジネス・インキュベーション施設を設け,電通大の社会貢献モデルと収益モデルを新しく創りたいというお考えがありました。私はかながわサイエンスパーク(KSP)で取締役として長くインキュベーション活動に携わった経験から,電通大が挑戦する新モデルに共感してお手伝いした次第です。
普通,インキュベーション施設とは起業家が事業を起こし,成長を促進しやすくするための場です。私はそれだけでなく,電通大のインキュベーション施設が,起業家社会の風土醸成を推し進める拠点として存在感を示すことが大事だと考えました。ですから,インキュベーション施設の入居企業がサクセス・ストーリーを持って活動することを重視しています。シリコンバレーのベンチャ企業群は,世界をマーケットに大成功目指して頑張っています。中には夢を実現する企業が出ます。成功するとその波及効果が地域に広がります。お金が回り,仕事が増え,雇用が増える循環が地域の中で発展します。シリコンバレーの盛況はこうした成功の連続と蓄積の結果です。ですから電通大インキュベーションの経営者には,こぢんまりとした成功ではなく,大きな成功を目指して欲しいのです。

社会貢献モデルと収益モデルについてお聞かせください。

志茂  電通大のベンチャー企業が新しい製品やサービスを開発し提供することによって,社会の質が向上するならば,これは素晴らしい地域貢献ですよね。大学はそのためにスペース,技術,人材,ファンドを積極的に提供してビジネスの実現化を後押しする。収益モデルとは,電通大のベンチャー企業が大成功すれば,大学への大きな寄付が期待できます。ですから,誰かがブレークスルーすれば,後に続く人たちが出てきます。そのためのステップとしてインキュベーション施設を活用してもらいたい。

現在の入居企業へ期待することは何ですか。

志茂  自らイノベーションの担い手になることを目指してブレークスルーして欲しい。そのためには大きな志を持つことが必要です。ちょっとした企業になって満足することを期待しているわけではありません。世界のインキュベーション施設を見ますと,例えばスタンフォード大学のインキュベーション施設Industrial Parkにはヒューレット・パッカードのような大企業がアンカー企業として入り,世界的に事業展開をしています。電通大のベンチャー企業もアンカー企業目指してブランド力を高める努力が必要です。

インキュベーション施設があることで大学の可能性が拡大しますね。

志茂  そうです。インキュベーション施設があるので,基礎研究から得られたアイディアを事業へ発展させることができます。その時大事なのは気概です。ベンチャー企業の経営では当事者意識が大切です。これは下請け意識とは全く異質のものです。下請け企業は発注企業から仕事が来るので,当事者意識が弱く,何か問題が起きると他人のせいにする傾向があります。しかし,ベンチャー企業には自分たちの夢がありますから,自分の責任で活動しています。支援者の立場で両者を見たとき,マインドの違いの大きさを感じます。私はベンチャー経営者の志や気概が好きなので,ベンチャー支援にやりがいを感じました。その結果,30年以上この世界にいます。

ベンチャー支援ならではの喜びがあるということですね。

志茂  そうです。ベンチャー企業は応援のしがいがあります。原因と結果を他人のせいにせず,自分に置くという気持の持ち方に共感しています。ここが私のベンチャー支援の原点ですね。

学生へのメッセージをお願いします

志茂  基礎力が大事です。学生時代はしっかり基礎を学ぶこと。就職しても,いつかは自分が経営者になって意思決定するんだというイメージを持って社会に出て欲しい。するとチャンスが巡ってきます。30代,40代になるかも知れません。その時に大事なのは仲間や支援者の人脈です。学生の時から,起業家になるという選択肢も視野に入れて,仲間を大切にし,基礎の勉強に力を入れてください。大事なのは自分の思いです。思いを持った人が増えることが日本を変えることになります。電通大の学生は真面目で優秀なので,自信を持って良い。半面,自分の知を元に世界に出るチャレンジ精神や起業家精神に欠ける面があります。ですから,今やっている基礎の勉強が将来社会でどんなふうに役に立つのかつながっていくのかイメージを持つとヤル気が出て来るはず。手抜きすると後で反動が来ます。学生時代に苦労しておくと後で力になります。楽な方と苦労する方があると,多くの人が楽な方を選びます。でも楽な方を取ったら,後でロクなことはありません(笑い)。社会は最高点を目指しています。「この辺で良いだろう」という楽を取る考え方は社会が求めるものとは反対を向いています。大学で何をしたか,就活で問われます。自分の最高を目指す気持で大学時代を過ごしたかどうか,生き方が出ます。苦労して身につけたものは自分を助けます。志を大きく持ってください。

どうやって自分の強味を見つければ良いでしょうか。

志茂  活動の原動力になるのは,自分が好きなことです。好きなことを続けると他の人との差が出てきます。天職にもなる。だから興味を持てるものを見つけることからです。何で勝負するにしろ,出発点は自分の好きなことに打ち込むことが大事です。ヤル気の源です。仲間からあいつはあの点はスゴイね,と言われるように。大学時代,その後の人生,継続するとスゴイものになります。世界を視野に入れましょう。目標になるような人を見つけるのも良い方法です。そういう存在が自分を成長させてくれるメンターですから。

どうもありがとうございました。