UEC-IM(URA)インタビューシリーズ No.005

学生時代は,やりたいことがあったら挑戦するべき。失敗のデメリットよりそこから得られるメリットが人生で貴重。

BIGLOBEキャピタル株式会社 米山能史(よねやま・よしひと)

 

米山さんはTOEICスコア960の電通大出身の元エンジニアである。米国クレアモント大学院大学のMBAホルダーでもある。現在,コーポレート・ベンチャー・キャピタリストとして活動している米山さんにベンチャーキャピタルやベンチャー企業の経営者像について話を聞いた。

【インタビューは2013年12月13日,品川区大崎のBIGLOBEキャピタル本社にて。写真と文/IM(URA) 安部博文)】

▲BIGLOBEキャピタルが入居するゲートシティ大崎のウエストタワー前にて。

BIGLOBEキャピタルのご紹介からお願いします。

米山  BIGLOBEキャピタル株式会社は,コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。設立は平成19年,NECビッグローブ株式会社の100%子会社です。ファンドの規模は約30億円。

今出てきた「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」とは何でしょう。

CVCとは,コーポレート(事業会社)がベンチャー企業への投資により,自分の会社と投資先がWIN-WINの関係で発展することを目的とするベンチャーキャピタル(投資会社)のことです。当社の場合ですと,事業会社がNECビッグローブです。NECビッグローブは,インターネットを利用した情報サービスの提供と関連業務を幅広く手がけています。このビジネス展開にプラスになりそうなベンチャー企業に投資してお互いに成長しましょう,というのが狙いです。

事業会社がベンチャーキャピタルをする,というお話ですね。ではベンチャーキャピタルとはどういう活動なのでしょうか。投資と融資という言葉がありますが。

米山  両方とも企業が成長するのに必要な資金を得る方法ですが,性質は全く異なります。ベンチャーキャピタルは投資によってベンチャー企業に資金を提供しています。投資では企業が株式を売ってお金を調達するので,簡単に言うと返さなくても良いお金が調達できます。大きな成長が見込まれるベンチャー企業の資金調達に向いています。ただし,投資家は経営に口を出す権利を持ちます。言い換えれば経営者が会社の一部を投資家に切り売りするのと同じと言っても良いかも知れません。一方で融資は企業が銀行など金融機関からお金を借りるということです。借りたお金ですから,期限までに全額返済しなければいけません。では投資家と銀行の目的の違いはなんでしょう。投資家の場合は,投資先の企業の株式価値が上がることによって,最初の投資金額よりずっと大きなお金を得ることが目的です。銀行の場合は,利子を得ることが目的です。そこに両者の違いがあります。

BIGLOBEキャピタルの投資を受けた場合,どういう良いことがあるのでしょうか。

米山  投資先にはハンズオン型の成長支援や人脈の紹介を行います。また,NECビッグローブの経営資源の活用やビジネスチャンスづくりにも力を入れます。だから当社からの投資先は主に通信関連やソフト開発などネット分野のベンチャー企業になっています。

ベンチャーキャピタルがそのような支援を行う理由は?。

米山  当社の場合,投資先が成長すればNECビッグローブとして新たな事業機会が期待できるということがありますが,一般的には投資先の株価が上がるからというのが大きな理由です。株価が上がるほど投資のリターンが大きくなります。逆にいうと投資先が成長しないのはリスクです。ふつうベンチャー企業は「EXIT」とか「出口戦略」と言われるシナリオを持っています。これはいつ・どんな区切りをつけるか,ということです。株式市場へ株を公開(これをIPOと言います)する,あるいは大きな企業に会社を買ってもらう(これをM&Aと言います)という2つのシナリオが一般的です。この時に株を手放すと膨大な利益を得ることができます。

これから注目している分野などはありますか?

米山  例えばIoT(Internet of Things )があります。IoTとは,家電,センサー,ガジェット類などあらゆるものがネットにつながっている世界のことである,などと言われています。これから世の中の多くのもの(Things)がInternetにつながっていくので,この分野は大きな成長が見込めます。ほかには,プロセスを簡単にしてくれるようなテクノロジーがあります。人手がかかっていたプロセスがスマホの操作で代用できるような分野ですね。たとえば,自分が今いる場所に簡単にタクシーを呼べるスマホアプリなどがあります。ベンチャー企業は成長分野にいることが大事ですが,電通大はこうした成長分野に関係が深いので,みなさんの知識や実力はとても有利に活用できると思います。しかも情報が豊富な東京です。視座を高く,広く世の中を見ると良いと思います。

ベンチャーキャピタルの社会的な意義は大きいですね。

米山  はい。世の中を良い方向へ変革していく大きなエコシステム(生態系)の中で,ベンチャー企業とともにその一端を担っていると思っています。でもベンチャー投資はリスクが高いので,どうしても慎重になります。だから決定するまでに時間がかかる。投資を受けることを考えるベンチャー企業経営者であれば,資金にゆとりがあるうちから準備を進めたほうがよいでしょう。お金が少なくなって慌てても間に合いません。時間がなくなると失敗確率も高くなります。ベンチャーキャピタルもCVCだけでなく,いろんなタイプがありますから,その中で自社に合うベンチャーキャピタルを見つけ出すことが大切です。

ベンチャー・キャピタリストの目から見たベンチャー企業の成功要件とは?

米山  たくさんありますが,その中の一つとして経営者が身につけている成功の要件についてお話します。まずやりたいことがはっきりしていること。つぎにやりたいことを実現する方法が適切であること。つまり,明確な目標と適切な達成方法を持った上で,言っていることと行動が一致している人です。この大事なポイントを押さえた上で,大きな絵を描く力や大口を叩く(笑い)ガッツがある人が面白いです。現実的には言っていること(目指していること)の半分もできないことは普通に起こります。でも言わないことにはその半分さえもできません。ですから,ベンチャー企業を起こす経営者の方には決してこぢんまりとまとまらないでほしいです。これはこれから進学されたり社会に出られたりする学生の方にもそのままあてはまると思います。

学生への言葉が出ましたので,その流れで学生に向けたコメントをお願いします。

米山  「一つのことに囚われず,色々な視点を持ってください」です。色々な視点を持つということは,色々な人の立場が分かるということです。これは社会に出て仕事をする上でとても大事になります。社会には様々な立場や考え方の人がいて,自分とは違う立場や考え方の人たちと一緒に仕事をするのが通常です。仕事をするのに人と付き合わずにいることはほぼ不可能です。事業を成長させ,自分を成長させるには人との交流は避けて通れません。だから,学生時代に人のことを理解できる資質を身につけることはとても大切なのです。一つのことに囚われず,色々な視点を持ってください,というのはそういう意味です。
では色々な視点を持つために具体的にどんな活動をすれば良いのか。これはライフネット生命の出口さんがおっしゃっていた言葉がとてもしっくりきましたので紹介させてもらいますが,たくさんの人に会って話を聞くこと,本を読むこと,旅行して普段とは違う環境に身を置くことです。人と本と旅ですね。
自分の世界の中での悩みなんて,広い世の中を知るほど,自分が思っているほど大した問題ではない,ということが分かります。私は大学に入る前に浪人1年,大学に入ってから留年1年しています。その時はこれはまずいことをしたと思っていました(笑い)。けれども,もちろんサポートしてくれた両親や友人・知人への恩は決して忘れられるものではありませんが,今振り返ると,1浪も1留も当時感じていたほどの失敗感はありません。学生時代の失敗コストはあとから振り返ってみればとても低いものです。だから興味を持ったことは何でも挑戦してみるべきです。失敗を恐れてやってみないデメリットより,失敗したけどやってみたことによるメリットのほうが往々にして大きいものだと思います。

米山さんは社会人になってから米国に留学してMBAを取得していますね。

米山  はい,NECパーソナルプロダクツに所属していたとき,米国留学プログラムがスタートしました。早速手を挙げたところ選ばれ第1号留学生としてクレアモント大学院大学に入学しました。とてもオープンな校風の大学院です。米国生活では日本と全く異なる価値観に何度も驚きました。例えば,仕事は滅私奉公が当たり前と思っていましたが,アメリカでコンビニの店員がヘッドホンで音楽を聞きながらノリノリで商品棚を整理しているのを見て仰天したりしたことがありました(笑い)。そのような価値観でアメリカの社会が回っているように思えるというのは留学で得た大きな視点の一つです。大学院の授業も,自分を表現する方法や説得・プレゼンなどが多く,人と人が接する機会を重視していました。電通大ではそのような授業を受ける機会が少なかったので,新鮮な経験でした。

英語は壁にならなかったのですか?

米山  正直これは大変でした。電通大の時から海外に興味があったので自分で英語の勉強をしていましたし,海外とのやりとりをする業務もしておりましたのでなんとかなると思いましたが,自分が予想していたよりもはるかに多くの努力を必要としました。けれどもやらなればならない状況に追い込むと不思議となんとかなるものですね。

進学先に電通大を選んだ理由は?

米山  3つあります。第1は,子供の頃からメカいじりが大好きだったので理系の大学であること。第2は,私は群馬出身なのですが,様々な情報や文化に触れやすい東京にある大学に行きたかったということ。第3は,親に負担をかけたくないので国立であること。そして合格できたのが電通大だったというわけです。学生時代には東京であることの地の利を活かして,300人ほどいたインカレサークルに所属して様々なイベントを楽しみましたし,その代表を務めたりもしました。

就職先を決めた理由は?

米山  就職は地元で,という思いがありましたので,当時のNEC群馬にしました。ここでパソコン用半導体設計を手がけました。パソコンの成長期だったので,それはもう忙しい毎日でした。VALUESTAR Sなど新商品の企画も担当しました。いつの間にか群馬から東京に出ることになり(笑い),NECパーソナルプロダクツ戦略部門,NECビッグローブを経て,BIGLOBEキャピタルは2011年からです。

どうもありがとうございました。

▲1996年3月 電通大を卒業。同年4月,NEC群馬(NECパーソナルプロダクツ株式会社)に入社。デスクトップPCの商品企画・開発・製造を担当。2005~2007年,海外留学生第1号としてクレアモント大学院大学(The Drucker School)に留学しMBA取得。2010年7月よりNECビッグローブ株式会社で新事業立ち上げ体制構築,CVC投資に携わる。趣味は1980年製ハーレーダビッドソンの整備とツーリング。ウォーキングと筋トレに励むも腰痛が悩み。電通大を愛する卒業生。

 

【米山さんの推薦図書】

磯崎哲也 『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』
2010年,日本実業出版社。

ベンチャー企業を理解するのに必要な人と金に関する知識を平易に説明してくれる良書。
2,200円+税。

 

D.・カーネギー 山口博訳 『人を動かす』 1999年,創元社。
成熟した人間になるためにはどのような心構えや行動が必要かについて豊富なエピソードで読者に気づかせてくれる古典。1,500円+税。