研究者が実験に専念できる実験室の安全環境を整備・維持するプロフェッショナルを紹介する。

日下部正秋(くさかべ・まさあき)

 

1962年10月,東京生まれ。和光大学経済学部経済学科卒業。都内のパッケージメーカーに就職し営業を担当。3年後,兄が起業した化合物半導体製造装置メーカーに入社。同社で営業職15年,購買職5年,計20年勤務。2008年,同社のM&Aに伴い退職。2010年,プラスワッチを設立し代表に就任。高圧ガス第1種販売主任者(特殊高圧ガス)免状 第3887号(東京都)。特定高圧ガス取扱主任者講習(高圧ガス保安協会)修了。3東京第466号。毒物劇物取扱者(一般) 第19954号(東京都)

【写真と文/IM(URA) 安部博文】

研究者のために安全な実験環境を整備

私は,兄が起業した化合物半導体の製造装置メーカーで20年にわたって営業と購買を担当していました。その会社はバイアウトされましたので,私は独立し,2010年にプラスワッチを設立しました。 前職での現場経験とガス取り扱いの専門知識を元に,研究者向けの実験装置・環境の整備と維持を事業の柱にしています。研究者には安全が担保された実験環境の中で,実験に専念して欲しいという思いがあるからです。

実験室の内容は時間と共に変化

新しい半導体を開発するための材料研究では,中核となる成膜装置を中心にして,原料供給系,排気系といった3つの主要な設備が必要です。さらに実験室で設備を安全に運用するためには,室内の換気設備や検知器などが必要になります。これらが連動して研究者や学生は安全な実験ができるわけです。 多くの実験室では,テーマの変化に伴い,実験装置を変更したり追加していきます。ですので,時間が経つに連れ,電気系統や冷却水系統、ガスの供給・排気などはかなり複雑化していくのが普通です。

特にガスの安全対策に強味

半導体の開発においては、特殊材料ガスなど取り扱いに注意が必要なものの他、水素や窒素などの一般ガスも頻繁に使われます。人体に影響のある材料はもちろんですが、窒素なども部屋に充満すると、酸欠などの事態が発生します。 ですから、安心して実験できる環境をつくるためには、それぞれの装置や機器だけでなく、実験室全体で安全を考える事が大切なんですね。

ワンストップで実験環境を見える化

研究者が実験装置や供給配管、換気設備を企画し,それぞれの専門業者に分離発注しているのが一般的です。私も業界に長いので,これが当たり前と思っていました。しかし,実験環境の安全確保のためには,実験装置と実験室の全体像をワンストップで把握する機能が必要だと気づきました。そこで,地味ですがこの仕事を大切にしたいと考えているわけです(笑い)。

新しいチャレンジと基本の大切さ

電通大発ベンチャーとしては,一色教授が取り組んでおられるシリコンフォトニクスの開発という研究テーマを支える、新しいコンセプトの実験装置の開発と提供を手がけています。大学の研究室は将来の可能性を探求する新たな着想で、従来にはない実験にチャレンジします。高いスキルが要求されるのがやりがいになります。しかし,これも実験環境の安全確保という地に足の着いた基本があっての話です。プラスワッチは研究室の「基本とチャレンジ」の両面に貢献します。