地震を予知する:

(2)地震予知の仕組み 地上で起きる地震の場合

地震予知の仕組みを知ろう。

まず,電波の特長を確認しよう。次の4つだ。
(1)電波は波である。障害物がぶつからない限り直進する。
(2)地表の約60kmから上には電離層が存在する。
(3)電離層や地表は電波を反射する性質がある。
(4)送信局から発信された電波は,電離層と地表を反射しながら進む。

では,この電波の特長をどのように使って地震を予知するのだろう。
長波VLF(Very Low Frequency)を使った予知の仕組みを順を追って説明する。
まずVLFの特長を押さえよう。次の4つだ。
(1)VLFは波長の長さが10kmから100kmの電波のこと。
(2)用途は潜水艦への通信用や電波時計用。
(3)日本のVLF送信局は3か所。宮崎県にある海上自衛隊えびの送信所,福島,佐賀。
 地震予知にはえびの送信所JJIと福島JJY局の電波を活用。
(4)VLFの受信には,専用の受信機が必要。

予知の仕組み(Step1)

(1)VLFの伝わり方は昼と夜で違いはあるもののほぼ一定。だから特定の受信位置では受信状態も一定である。
(2)しかし,太陽のフレア(爆発)や磁気嵐が起こると受信状態が変化する。フレアの場合は数分の変化が起き,磁気嵐の場合は数時間から1日にわたって変化が起きる。
(3)過去の受信データを調べると, M5以上の地震が発生する1週間前に1日以上の変化が起きている。
(4)この結果から次の推論ができる: 受信状態が1日以上変化したら,1週間後に地震が発生する可能性がある。

予知の仕組み(Step2)

(1)地震予知には「いつ」「どこで」「どれくらいの大きさで」の3要素が必要。
(2)このうち「いつ」は1週間後に,「どれくらいの大きさで」はM5以上であることが分かった。
(3)「どこで」の推定方法は次だ。
 地震が起きるとしたら,えびの送信所とA地点の受信機の間だ(図1)。
 しかし,これでは範囲が広すぎて対応策がとりにくい。
(4)そこで複数の直線(パス)を導入する。海外の送信局と国内受信機のパスである(図2)。
 パスの重なりから範囲を絞り込むことができる。「どこで」を推定する。

予知の精度向上

VLFを使った予知の精度を上げるには次の取り組みが必要である。
(1)パスを増やす,すなわち受信機の設置か所を増やす。
(2)各受信機の受信データを継続的に収集する。
(3)集めた受信データから異変を見つけ出す高効率のコンピュータ・アルゴリズム。
(4)異変の原因が地震によるものか他の要因かを判別する識別アルゴリズム。

もうちょっと詳しく

インキュベーション・マネジャー(URA)の安部がインタビューする。

なぜ受信状態が変化するのですか? もう少し教えてください。

早川
送信局から発信するVLF信号は一定です。テレビやラジオの番組が決まったチャンネルになっているのと同じですね。えびの送信所は22.2kHzです。受信状態の変化は送信所から受信機の間で起きます。電波は地表と電離層の間を反射して伝わることは学びましたね。地表の状態は一定です。ですから変化するのは電離層だということが分かるのです。

M6クラスの地震の前に受信状態が具体的にどんなふうに変化するのでしょうか?

早川
放送局からの電波の到達時間がいつもより短くなるのです。
電波の速度は一定です。考えられるのは電離層が地面に向かって下がり,電波が飛ぶ距離が短縮したということです。これは長年のデータの蓄積と解析で確認しました。地震予知でポイントになるのは,電離層が下がる場所です。電離層が下がる場所の地下が地震源だからです。地震前の地下活動で何らかの力が発生し,それが上空の電離層に影響を及ぼしているのでしょう。そのメカニズムは解明途上です。